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2009年4月11日 (土)

【番外編】海軍風マカロニナポリタン

以前の記事(【超番外編】ナポリタン考)で、ナポリタンの由来を調べる際に参照した上野玲氏の「ナポリタン!」[1]だが、海軍食起源説が載っていた部分に私は妙に引っかかりを覚えていた。

その部分というのは以下の通りである。

昭和7年の『海軍研究調理献立集』には、麺類の部で「マカロニナポリタン」というメニューがあることが判明した。残念ながらこの料理のレシピは残っていないが(後略)

実は別の参考文献「写真で見る海軍糧食史」[3]にはこの本の一部写真が載っており、しかも主要なメニューのレシピも転載されている。その内容を見た感じでは「海軍研究調理献立集」[4]はほぼ間違いなくレシピ集だったと思われるのだ。なのに、マカロニナポリタンだけレシピが割愛されてレシピが現存しないというのはどうも不自然だ。

幸い、この「海軍研究調理献立集」は東京都練馬区にある農文協図書館に収蔵されていることが調査(Google検索)の結果判明している。この原本にあたればレシピの有無ははっきりするはずである。

というわけで、この1次ソースにあたってレシピの有無を調査、あわよくばレシピをゲットしてしまおうと調査員を派遣することに決定した。なぜ自分で行かないかというと、この図書館は平日しかやっていないので週末しか動けない私にはアクセス不能であるからである。平日この場所にアクセス可能な調査員との交渉は難航を極めたが、過橋米線吉祥寺店の食事1回分という多大な犠牲を払った上で、なんとか調査を決行することができた。以下は今回得られた貴重な(?)調査結果の報告である。

【探索】

農文協図書館の最寄り駅は吉祥寺駅、もしくは武蔵野駅である。今回の調査は過橋米線吉祥寺店で食事を摂る都合から吉祥寺駅を出発点としたとのこと。

ちなみに過橋米線吉祥寺店は吉祥寺駅から歩いて数分のビルの地下にあり、末広町店と異なって一品料理のハーフを出していたりするらしい。

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ちなみにこれがハーフの老江湖豆腐。3つ入りのようだが、これにご飯をつければ丁度良い一食分という気がする。末広町店でもやってくれるといいのに。

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っと、話がそれてしまった。話を元に戻すと、農文協図書館は吉祥寺駅から北にまっすぐ道なりに進んでいって徒歩で大体25分前後、向かって左手の方に生協の次に現れる建物とのことである。道沿いにあるので、歩いていてすぐ分かったそうだ。

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この建物の3Fが図書館になっており、靴を専用スリッパに履き替え、ロッカーに手荷物を預けてカウンターへ行き、カウンターで利用者登録を行う。ちなみに登録カード発行で100円かかるのと、住所確認のための免許証などの書類が必要だったとのこと。

そしてカウンターのおばさんに図書館のHPから検索した書名のプリントアウトを見せて、書庫から本を持ってきてもらう。そして、かの本とご対面。確かに求めていた「海軍研究調理献立集」がここに所蔵されていることが確認できた。

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そして、肝心の「マカロニナポリタン」の項目はこんな感じである。レシピもしっかり載っているではないか。マカロニナポリタンのレシピは現存するのだ。

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で、レシピを読んでみると、これはスパゲッティナポリタンとは全く違う料理であることが分かる。いわばトマトソースのマカロニグラタンとでも言うべき物。かくしていわゆるナポリタンの海軍食起源説は完全に棄却された。

しかしなぜ上野氏は「この料理のレシピは残っていない」などと書いたのだろう。彼が取材した「海軍食グルメ物語」[5]の著者である高森直史氏はこの本の内容を把握していたと思われるのだが。そこまでは聞かなかったのだろうか?

ちなみに、農文協図書館の所蔵リストにこの本が現れたのは2008年4月頃である。上野氏が「ナポリタン!」を書いた2004年時点でこの本を直接参照できなかったのは無理からぬことだったかもしれない。逆に言えば、こんなマイナーな書籍情報すら今やネットに出ていて、素人が簡単に調査可能ということである。つくづくネットは強力な調査ツールだと思う。リアルな調査と併用しないと威力半減なのは言うまでもないが。

【再現】

レシピが見つかったのなら再現してみるしかなかろう。というわけで、少々面倒な部分を省いて再現を試みた。ちなみにレシピの大まかな内容は以下の通り。少々意訳を加えてある。

  • ハム、椎茸を繊切りにする。
  • マカロニを塩を加えた熱湯で茹でる。
  • マカロニを茹でている間にハム、椎茸をバターで炒める。
  • マカロニがゆであがったら水を切って、他の鍋にバターを溶かしてマカロニを弱火で軽く炒める。
  • そこに炒めたハム、椎茸を加える。
  • おろしたチーズを多めに加えて混ぜ、塩、胡椒、カイエンペッパーで味をととのえる。
  • さらにトマトソースを加えて混ぜる。
  • 耐熱容器にバターを塗って、具を入れる。
  • 表面にトマトソースをかけ、残りのチーズを振りかける。さらにパン粉を振りかけ、バターも少し乗せてオーブンで焼く。

さて、材料を集めよう。

まずはトマトソース。レシピには作り方がきちんと書かれていたのだが、ここでいきなり手を抜いて市販のもので済ませる。なぜか台所にカゴメのそれっぽいトマトソースがあったのでこれを流用。マカロニは適当な銘柄のものをその辺で買ってくる。

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チーズは自分でおろすのが面倒だったので、売っている物で済ませる。近頃はモッツァレラチーズまで細かくした物を売っているので実に便利。あとは一番ありがちなパルメザンチーズでごまかす。

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あとはハム、しいたけを適量、繊切りに。

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そしてここからは調理。はっきり言ってたいしたことない。

繊切りにしたハムとしいたけをバターで軽く炒める。

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マカロニをゆであげる。

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ハム、しいたけとマカロニを混ぜる。

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塩、胡椒、カイエンペッパーで味をととのえ、チーズを追加。そしてトマトソースを追加。

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あとは耐熱皿に盛ってチーズとパン粉をふりかけ、バターを少し落とす。

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あとはオーブンで焼く。今回は300℃で20分強くらい焼いてみた。時間はもうちょっと短くてもよかったかもしれない。

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これでできあがり。できたてをハフハフ言いながら食べる。うまい。寒い日にこういうのを食べたら格別であろう。

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はっきり言って結構いける。海軍士官殿は結構いい物を食べていたのだな、と思った。

というわけで、スパゲティナポリタンとは別の道をたどったマカロニナポリタンであるが、これはこれで良かったのではないかな、という代物であった。これから暖かくなってしまうが、たまに冷えた日にでもお試しあれ。

ちなみに、Webサイト上ではマカロニグラタンイタリア風、として似たようなレシピが出ていた。[6]

【参考文献】

[1]「ナポリタン!」上野玲(著) 扶桑社 2004年11月

[2]「ナポリタン!」上野玲(著) 小学館 2006年5月
 文庫版。[1]と比べて引用書籍の出版社の記載が加わったのと、一部写真がさし変わった程度で単行本と内容はほぼ同じ。

[3]「写真で見る海軍糧食史」藤田昌雄(著) 光人社 2007年3月
 海軍研究調理献立集の内部写真有り。

[4]「海軍研究調理献立集」1932年3月

[5]「海軍食グルメ物語」高森直史(著) 光人社 2003年02月(未読)

[6]マカロニグラタン イタリア風のレシピ
 今回のものにかなり近いレシピ。

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コメント

よく調べましたねぇ!
感心しました、というよりも感動しました!

トマト味のグラタンですね。
ハウス食品からレトルトで出ているような気がします。

投稿: 酔華 | 2009年4月11日 (土) 16時55分

過橋米線一回分・・・次回は是非ワタシに御用命いただきたく・・・。

そういえば、ウチのナポ話をほにゃららと忘れ果てておりました。
いつかは出そうと思っています。
いつかはわからないんですが・・・。

でも、補足で自分の記録用に載せておきたい話はあるのですよね。

投稿: アリーマ | 2009年4月11日 (土) 21時51分

★酔華さん

そうですね、単なるトマト味のグラタンです。
結構いろんなところにありそうですよね。


★アリーマさん

アリーマさんは平日調査ができる方なんですか。
うらやましい。
吉祥寺の過橋米線も悪くなかったようですよ。

ナポ話はもう旬じゃないかな、と思ったのですが、
まとめておかないと忘れるので、気力が残っている
うちにやってしまいました。

投稿: 本須 | 2009年4月12日 (日) 00時20分

恐れ入りました。
私が調べきらず、曖昧に逃げていた部分を補足していただいて、大変勉強になりました。
さすがに、ここまではわからなかった。
ご苦労様でした。

投稿: 上野玲 | 2009年4月19日 (日) 18時41分

★上野さん

著者ご本人からコメントいただけるとは恐縮です。

年々ネット上に出てくる情報は増えていますから、上野さんが本をお書きに
なった2004年頃から比べると近頃は随分調べ物がやりやすくなったかと思います。

投稿: 本須 | 2009年4月19日 (日) 23時07分

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