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2009年8月11日 (火)

食べ放題を征く(終章)

さて長々と書き連ねてきた夏休み特集の本シリーズも終章である。これまで寄りつかないようにしていた食べ放題だが、久しぶりに3店舗巡ってみた結果を含め、全体を通しての総括を行ってみようと思う。

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ここ数年で新興の食べ放題が増殖してきていて、いったいこれらの店舗の質はどの程度のものなのだろうか、中華街の食べ放題自体の品質に変化は起きているのだろうか、というのが今回の調査における視点の一つであったわけだが、今回何店舗か巡った限りではこれまでより劣化したものが増殖しているというわけでもなさそうだ、というのが結論である。たまたま比較対象が悪かったのかもしれないが、新興店舗の方が従来店舗と比べて十分優位性があるようにさえ見えた点は驚きであった。

以下、中華街における食べ放題について、今回経験した内容も加味した上でいくつかの観点から考えてみたい。

・設備、フロアの雰囲気

食べ放題店といっても、中規模店舗から大きなフロアを持つ店舗までいろいろあるわけだが、店内設備の点では基本的にはどの店も大きな違いはなさそうだ。ある程度快適に食べることができる環境があれば食べ放題的にはさほど問題はないわけで、豪華な内装とかは全く必要ない。むしろ内装が豪華で料理がひどかったりするとその方が悪い印象を与えるので、内装はシンプルでいいのだと思う。

衛生面では見た感じ、不安を覚えるほどひどいものは見あたらなかった。小皿の洗い方がちょっと雑かなというのがあった程度。この辺は事故を起こしてしまったら店舗にとって死活問題になるので、それなりに各店舗は最低限のレベルをクリアしているものと思う。

フロアで気になるのは、各テーブルの配置と間隔である。あまり狭かったり動線を無視して配置していると、きゅうくつだったり、配膳の人が狭いテーブルの間をうろうろするので邪魔だったりということになる。比較的小型の店ではすでに席は作り付けだろうから、その辺はそれほどひどくなり得ないのだが、大ホールの店では詰め込み方によってはかなり不愉快な状況が生まれそうだ。なお、今回鵬天閣で見かけたような丸テーブルを3等分して2人3組用の席にしたてるというようなものは論外。運悪くそういうものに当たりそうになったら、お店の人に変えてもらうように交渉すべきだろう。無理なようなら、店を出て別の店を選択するくらいのことは考えた方が良いと思われる。


・価格

お店同士がお互い競争しているためか、大体ソフトドリンクバーを入れて3000円前後というところに相場が落ち着いているようである。ただ、最近過当競争気味になってきているため、特に平日昼間はもっと格安に設定されているようだ(品数はちょっと減らしているようだが)。料理のバリエーションにこだわらないなら、平日昼間に格安で食べてしまうという選択も有りである。

食べ放題で値段的に3000円というのはどうかという点だが、2人で6000円として、大体15~20皿を食べているので、一皿300円~400円という計算になる。確か、均一料金で料理を出している「大福林」が380円、「高華楼」が399円であることを考えると、均一料金のお店と価格帯としてはほぼ等価に見えることになる。ドリンクバーを考えると食べ放題の方が少し優位だし、詰め込まれにくくのんびり過ごせるという点では均一店の方が優位だろう。結果的に収まるべき価格帯に収まっているという印象である。ある意味それほどお得というほどでもない、とも言えたりするのだが。


・飲み物

たいていの店にはドリンクバーと飲み放題がオプションでついている。付けない方がいまとなっては少数派なのだろうと思う。昔なら、食べ放題で赤を出す分飲み物で取り返すという発想があったかもしれないが、今となってはそれは無理だろう。ファミレスでもドリンクバーが無い方がむしろおかしいという流れなので、食べ放題でもドリンクバーを付けるという方向はもう変わらないと思われる。逆に付けないと今後は不利になるのではないかと思う。

飲み物に関する注意点として、アルコールの入った飲み放題にすると何かと制限がきつくなる傾向にある。時間無制限が制限付き2時間になったりするようだ。この辺の制限の付け方はネットで見ても分からないことがあるので、行く前に電話などで確認しておいた方が良さそうだ。


・注文ルール

一度に注文できる品数が制限されているケースが多い。大体が6品くらいに制限を設けているようだ。3名くらいまでだったらこれで十分だが、4名以上になるとこの制限では注文の頻度が上がりすぎてかなり忙しくなるだろう。同じ品を複数注文する場合は別カウントにならないというケースもあるだろうから、多人数で行く場合はその辺も確認しておくと良さそうだ。あと、どこの店でも持ち帰りは不可。大量の食べ残しについては別途料金を請求するということもあるので、注文はよく考えて行うようにしたい。


・品目数

基本的な料理+味付けのバリエーションという形で品数を増やしているケースがほとんどなので、他店と比べて品数が10品程度増減した程度では事実上差が無いと思って良い。3店舗を比べた限りでは、よほどこだわりのある品が無い限り、どこのメニューでも満足感に差は生まれないだろうと思った。今は各店舗のWebページなどでメニュー一覧を見ることができるので、どうしても食べたい品があったらそれが入っているかどうか確認しておけば良い。

メニュー内容はどこも普通の一品料理のメニューと構造的にはほぼ同じで、お勧め品(期間限定品)、前菜類、スープ類、鶏、豚、牛、野菜・豆腐、麺飯、点心、飲み物、という分類になっていることがほとんどである。それぞれの分野から好きなように注文すればよい。注文するにあたって個人的にいくつか注意点があると思っているがそれについては後述する。


・デザート

最近のお店ではデザート類は別途デザートバーという形で、客がフロア隅のコーナーから自由に取ってこれるようにしているケースが多い。デザート類などは元々最初から作っておいたものを持ってくるだけなので、そちらの方が合理的ということだろう。ここの在庫が切れがちだと一気に不満が高まるので、お店もそうならないように気をつけているだろうが、ここを在庫切れにするようなお店であるかどうかは、ネットなどで実食情報を見て事前にチェックしておくと良さそうだ。


・接客

若いスタッフは接客が比較的良い傾向にあるように見えた。多分若い世代は、その人自身がファミレスなどを利用したりバイトをやったりした経験があり、基本的に要求される接客のレベルを理解しているのではないだろうか。逆に少し年齢の高い層は接客がいまひとつの場合が多いように思えた。その点からすると、新規採用ができる新興のお店の方が接客は良くなる傾向にあるように思える。


・原価低減の工夫、効率化、手抜き

ここに各店舗のスタンスや考え方の差が如実に表れてくると思っている。単に一品料理と同じようなものをお得な値段で出してしまうとしたら、それでは商売は成り立たない。客の満足度を落とさないようにしながらなんとかしてコストを落としていかないと店は維持できない。そこで、原価低減や効率化、ある種の手抜きが必要になってくるわけだが、この辺は各店の手持ちリソースや状況に応じて各店各様に見える。

基本は大規模化と多店舗化でスケールメリットを生かすこと。これによって一品あたりにかかるコストを減らしてゆくことができる。この辺はお店の資本によるが、大ホールを設けたり、系列店を作ってゆくことで対応している店が多いようだ。

次に一番ありがちなのは料理の質を落とすことだ。原材料を安くて質の悪いものにし、調理はほとんど作り置き、注文を受けたら温めるだけ、というのが一番安易なやり方である。しかし、あからさまに質の悪いものに客は金を払いたいと思うだろうか。食べ放題に対する客側の期待には「お得感」もあるはずだから、安かろう悪かろうでは客はついてこないだろう。従って、この手を単純に使うと客が逃げてゆくことになるので今時これは使えない。

効率化としてはドリンクバーやデザートバーなどのように、客にある程度セルフでやらせてしまって、店の労力を使わないようにするという手もある。あとは鵬天閣で採用しているように見えたのだが、各テーブルのオーダーをまとめて執行し、同じ料理は一度に処理するというようなやり方も効率化につながる。ただし、客数がそれなりにいてダブる料理がきちんと出てこないといけないのでそれなりの規模を持つ店舗でないとこういうのは難しいだろう。

三国志新館で見られたように、調理自体の手はあまり抜かずに原材料の種類を微妙に減らす、料理の主役でないトッピングや材料を少し落としてしまうというのは比較的うまいやり方だと思う。食べ放題に限らないが、主役の食材にピーマン、パプリカ、玉葱を足して料理を作ると他の食材を落としてもある程度ごまかしが利くので、安ランチなどでもこの手を使うケースをよく見かける。

オーダーミスを防ぐという観点からもPOSシステムを使うのはもはや当然という感じでどこも使っている。あとは、それを厨房におけるオーダー執行のタイミングや仕入れなどにも連結して情報を使うかどうかが効率化のポイントであろう。この辺は内部情報すぎて、食べている身ではなかなか分からないが、食べ放題の経営上は極めて重要な因子であると思われる。

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とまあ、思いつくままにつらつら書いてみた。で、食べ放題に行く客は結局どういうことに気を付ければよいのだろうか?以下にその辺を書いておしまいにしたい。

・事前チェック

食べ放題に行く前に、事前チェックはしておいた方が良いだろう。何も考えずに客引きに流されて入ってしまうよりはある程度予習をした方が失敗が避けられるだろう。

  • どうしても食べたい品がメニューに入っているか?
  • 飲み物を加えた場合、どのような制限が加わるか?
  • 一度に何品ずつ注文できるか、注文ルール。
  • デザートバーの品切れ等の噂は無いか?
  • 実食情報全般。

・シチュエーション

珍しいものや高品質のものは狙わず、比較的一般的な品をそこそこ安値で楽しみたいという向きに合っていると思われる。あと、なるべくならデートに食べ放題は避けた方が良い。相手が食べ放題マニアなら構わないが、通常食べ放題でお腹いっぱいになる頃にはお互いの口も重くなり、倦怠感いっぱいで店を後にすることになる。

・人数

今回の調査では、大体1卓で6品までの注文というのが注文ルールに多い感じだ。そこからすると、3~4名が適切であろう。2名だとあまり品数を稼げないし、人数が多いと頻繁に注文を入れなくてはいけなくなる。中でも私は3名ベストと考える。4人テーブルで1人分のスペースが空いた形で着席できるので、空き皿などをそのスペースに置くことが可能になるのだ。食べ放題は客数を稼ぐために客席を狭めに作ってあることが多いので、このスペースが有るのと無いのとでは快適さがかなり異なると思われる。

・注文の仕方

そこそこの品数を食べようと思っていたら、前菜、肉類を最初に注文するのが良いだろう。前菜類だと作り置きが当たり前なので即出てくるため、注文後何も出てこないでしばらく待つことを回避しやすい。肉類については血糖値を上げにくいのでその後の注文がやりやすい。一番最初に炭水化物を入れてしまうとすぐに血糖値が上がって品数を稼げなくなるので注意が必要である。なので、一番最初の注文に炒飯を入れてしまうのは最悪のパターンであろう。2時間くらいで食べようと考えている場合、麺飯や点心類は1時間経過後くらいから注文するのが丁度良い気がする。

注文数6品までというルール上では、4品くらいの注文を単位にすると良さそうである。万が一注文執行が遅めの場合は2品ある余力を使って、早めに出そうな前菜類を追加することができる。余力を使い切った状態で身動きが取れなくなるのは避けるべきだ。また、注文執行が遅いと困る場合、なるべく他のテーブルも注文しそうなものを注文するというのも有効である。

注文のインターバルは1回4~5皿注文するとして、2人で大体30分間隔、3人で20分間隔くらいが目安だと思う。

【おまけ】タイムテーブルを作ろう

今やデジカメの容量はやたらと多くなっていて、無駄ショットを大量に取っても困らない。注文時に注文した品のメニュー写真を撮影して、注文品が届いたらその写真を撮るということをやっておくと、画像のタイムスタンプを見ることで注文と到着時刻のタイムテーブルが作れてしまうことになる。こうやって作ったタイムテーブルからその店の傾向が分かるし、他の人がその店を利用する際の重要な情報になるので、是非食べ放題の実食レポートにはタイムテーブルを入れて欲しいと私は思うのだった。

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以上、書いている方も疲れたが、読んでいる方もかなり疲れただろう。相変わらず私は食べ放題を食べるくらいなら同じ予算で一品料理を食べた方がまし、というスタンスを取るつもりである。ただ、食べ放題も店を選べばそれほどひどいものでもないし、ある種の需要には応えられるようにそれなりの改善は行われているようである。もし気が向いて食べ放題に行こうと考える人があったら、本シリーズを参考にして悔いのない食べ放題を経験していただきたいと思うのだった。

今回、人的財政的にもかなり犠牲を伴う調査となった。私としては食べ放題はもう当面たくさんという気持ちである。これ以上の調査については後進にゆだねたいと思う。というわけであとはよろしく。

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コメント

大レポート、堪能しました。

そっか!タイムコードの謎はデジカメだったのか!食べる暇無いじゃん!と驚いていたのですが・・・さすが教授。

でも、全般的に残念な結果ですね。
ちょっと前の食べ放題店は何か一つ目玉があって、他はダメでもそこそこ満足感が得られる仕組みだったのですが、どの店も特徴に欠けるなぁ。

オーダーにもコツがありますね。前菜と点心とデザート等、予め仕込んであるものの方が硬い気がします。

ビュッフェ型との比較は次回ですかね?
もうたくさん?

投稿: ほんま | 2009年8月11日 (火) 22時06分

全く恐れ入りました。
当初、もっと全てにおいてコキ下ろされるかと思いましたが、意外やまずまず、的な部分もあり、なぜか少しホッとしました(笑。

少食な私は、大通りの数店でも展開している、夜のセットメニューがニーズにマッチしています。

投稿: ふ゛り | 2009年8月11日 (火) 23時02分

★ほんまさん

タイムテーブルは大昔はメモ帳片手に必死で作っていたのですが、
いまや文明の利器を駆使するのですよ。
苦労知らずですっきり作れます。

ビュッフェ型は満足度が上がる可能性が全然見あたらないので無しですね。
残りの食べ放題調査はぜひほんまさんに後を継いでいただきたいです。


★ぶりさん

新興がボロボロで、ほれ見なさいやっぱり中華街は最近
劣化が激しい・・・といくと実に楽ちんな論調になったのですが、
調べてみるとそうでもなかったというのが実状ですね。

ま、食べ放題はもうお腹いっぱいなので、また通常のように
興味のある一品料理を探索する活動に戻ることになると思います。
次はまた5年後でしょうか。

投稿: 本須 | 2009年8月12日 (水) 00時18分

食べ放題の調査はまだまだ続けてほしいなぁ。
いや、実行するのは本須さんでなくてもいいですよ。
「ほんまさん」とか、テラめしの「とも2さん」にお願いする方法も…

お前がやれって?
私は小食なので無理です…

次回は最も安い店と最も高い店の比較ですね。
しかも、それぞれ同じメニューを食べて、
それを分析してもらいたい、と思います。

誰かやってくれないかなぁ。

投稿: 酔華 | 2009年8月12日 (水) 11時17分

★酔華さん

食べ放題調査、私はもうお腹いっぱいですので。
あとはどなたかにお任せしたいです。

よくよく考えれば、食べ放題って品数が多いとか、北京ダックがあるとか
そういう話ばかりで、今回のような観点での調査って見かけたことが
無い気がします。それで欲求不満が溜まって自分でやっちゃったという
こともあるのですが。

タイムテーブルを作って時間軸でどうだったか、
メニュー写真と実物でどのような差が発生しているか、
調理でどのような手を抜いているのか、など
ある程度客観的に調査しようと思えばできるわけです。
そして食べ放題に行こうと思っている人が知りたい情報はそれだと思うのです。

雑誌とかも煽るばっかりじゃなくて、きちんと調査すれば
いいと思うんですけどね。ああいう所の予算からすれば全店調べても
大した額じゃないでしょうに。

投稿: 本須 | 2009年8月12日 (水) 21時33分

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